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#3 魔物がゲロマズですわ!

last update publish date: 2025-06-29 16:00:12

 やり直し後すぐに修行を再開し、こっそり魔窟に入って魔物をもぐもぐをする日々を……

「おえっ……いやマッズ!あ、ドブみてぇな味に思わず汚い言葉を使ってしまいましたわ!メイド長に叱られてしまいますし気を付けませんと。」

 そんな日々を続けて数ヶ月が経ったある日アビゲイルはとある問題に頭を悩ませていた。魔窟に入っていたことがバレたのだ。

「お、お父様?これには魔窟くらい深いわけがあるんですの!」

 余談だが、魔窟は莫大な魔力によって空間が歪んで森内部が拡張されているだけで本来の規模はそこまでだったりする。そのため、森の中を突っ切るよりも森の縁に沿って進んだ方が距離が短い。それはさておき……

『ほう、それはこの俺、もといイザベラを納得させられる程のものなのか?さぁ試しに言ってみるといい。』

 マ、マイン踏みましたわァァァ!これ絶対何言ってもお父様に言い訳だと思われるやつですわ!どう取り繕ったところで何適当言ってんだ!って怒られるパターンですわ!こ、こうなったら諦めて開き直るしかありませんわね!

「わ、わたくしは強くなりたいんですの!絶対に強くならなければいけないんですの!何をしてでも……」

『何がお前をそこまで駆り立てるんだ。』

 龍に殺されたことを理由には出来ないですし……え、え〜っと……え〜っと……こ、これですわ!

「弱いままでは誰も、自分自身の命すらも守れないからですわ。わたくしは全てを投げ打ってでも強くなると決めたんですの!」

『どういう経緯でそう考えるに至ったかが気になるところだが……まぁいい。それよりお前の手網を握ることを考えねばな。俺がダメだと言ったところでどうせまた魔窟に入るのだろう?』

 乗り切ったと思ったら乗り切れていませんでしたわ!何が悪かったんですの!?

「そんな!は、入るわけがないですわ!」

『俺は……つまらない嘘が嫌いなんだ。』

"ビクッ"

 な、なんでバレてるんですの!?まさか表情に出て……

"ムニムニムニ"

 おかしなところは……

"モチモチモチ"

 なさそうですわね!

『何をしている?』

「なんで嘘だって思われたのが気になったので表情を確認しようかと思いまして……」

『はぁ……もういい。うちの騎士団の奴らの実地訓練に参加してこい。6歳のお前に魔窟はまだ早いとは思う……が、俺らの目を盗んで入られるよりはマシだろうからな。くれぐれも先走って勝手に魔窟にはいるんじゃないぞ。』

 お父様にすっごい呆れたような顔をされましわ!なんで!?それにしても我ながらほっぺの触り心地いいですわね。

"モチモチモチ"

「もちろんですわ!わたくしちゃんと我慢できますもの!」

『そうか、それじゃあ下がっていいぞ。』

「失礼いたしますわ。」

"ムニムニムニ"

『はぁ……』

 お父様がため息をついてますわ。きっとお疲れだったんですわね。心配ですわね……あとでお茶とお菓子でも持っていこうかしら。きっと娘であるわたくしの手作りお菓子を食べれば元気になりますわよね!

◇◇

父親side

『ふぅ……行ったか。全くあのお転婆娘は。それにしても"弱ければ誰も守れない"か……』

『旦那様、何か心配ごとでも?』

『あの子が変わったような気がしてな。少し焦り過ぎているようで危ういのだよ。』

『アビゲイルお嬢様はお変わりありませんよ。お嬢様はいつも誰かのことを考えておられます。その誰かを守るためには力が必要だと知って少々気が急いでいるだけでしょう。心配であれば旦那様が直接ご指導されては?』

『そうしたいところではあるんたが……』

『どうなさったんです?』

『あの子に教えるのが楽しくてやりすぎてしまう自信があってだなぁ……』

『ぷっあはははははさすが脳筋親バカ!ゴホンッ失礼しました。』

 こいつは相変わらず……

『おいセルワード!ゴホンッじゃ誤魔化せてないからもう取り繕わなくていい!ったくお前は……』

『それじゃお言葉に甘えて〜♪すーぐ調子乗って暴走しだすのはお前の悪い癖だよな。まぁ昔からだし今更治らんとは思うが。アハハハハハッ!』

 取り繕わなくていいと言ったのは俺だがさすがにやりすぎだろこいつ……

『はぁ……』

『ため息なんてついて悩みごとか?』

 お前マジで誰のせいだと思って……

『あぁ、丁度今一つ悩みごとが増えてな。』

『そうかぁ〜辺境伯様も大変だなあ。』

 これが俺相手じゃなければ無礼打ちだぞ。こいつ分かってんのか?

『チッ』

『そうカッカするなよアルバード。』

『はぁ……』

 最近調子乗ってるこのバカを一週間くらい魔窟にでも放り込んでやろうか。

◇◇

「ついに魔窟での修行がお父様公認になりましたわ!剣の技量を伸ばすにも限界がありますし、他の武術の要素も取り入れるべきですわね。」

 アビゲイルを含めルミナリア辺境伯家の者は皆修めるルミナリア流剣聖術では剣術以外も修練するのだがあくまで剣術がメインであり、軽くやる程度なのだ。とは言っても剣以外を使っても並の戦士には負けないのだが……

 相手が自分の土俵で戦っているにも関わらず負けたことで心を折られた者が数多くいるとかいないとか。

「それに増えた魔力の鍛錬もやり始める必要もありますわね。一流の剣士は得物を選ばないからと意地を張ってないで腕の良い鍛冶師の情報収集もしないといけませんわ。とりあえずお父様に伝手がないか聞いてみるのがいいかもしれないですわね。」

 念の為に騎士団に同行しての魔窟演習までには剣を用意すべきですわね。まぁ正直、あの時の龍クラスを連れて来ない限りわたくしは騎士団で支給されてるロングソードでも余裕ですけれど。

 さすがにあの龍は無理ですけれど。名付きの武器が用意できれば数年以内には問題なく討伐できますわ!とは言ってもいずれ来る災厄に対抗するにはまだまだ力不足ですわね……。それにイレギュラーはいつ起こるか分からないですものね。実際わたくしはそのイレギュラーに殺されたわけですし。

 龍種は最強格だ。それはあくまで種としての話。世界蛇、神を喰らう狼、霊鳥は格が違う。彼らは創世の時代から生き続ける化け物だ。世界に生まれし物たちの中から誕生した神に匹敵する存在。彼らの均衡が崩れようとしているこの時代に生まれた以上、神だろうとなんだろうと殺るしかない。だがそれは、人の身では限りなく不可能に近い大業。

 それでもアビゲイルは討伐可能であると踏んでいた。神話において人が神を殺す逸話は多数ある。ならば自分にできない道理はないと考えていたのだ。

「もっと……もっと強くならないとですわね!フンスッ!」

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